大雪山 銀線台〜赤岳


Date/Time: 2015:09:21 08:15:00
Camera: PENTAX
Model: PENTAX K-5 II s
Exporsure Time: 1/160
FNumber: 8.0
Aperture Value: 6.0
Focal Length: 21.0

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y2blog » iPhone版『山と高原地図』アプリ

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20

2012

iPhone版『山と高原地図』アプリ

iPhone版『山と高原地図』アプリを試してみた


iPhone用電子国土GPSアプリの開発は、国土地理院側から詳しい情報が出てこないので中断したままですが、GPSアプリネタとしてiPhone版『山と高原地図』アプリがリリースされたので、サンプル地図をダウンロードしてGPSアプリとしてどの程度使えるのか試してみました.


山を登らない人にとっては『山と高原地図』と言われてもピンとこないかも知れませんが、山登りをする人達にとっては必携の山岳地図で、この地図を持っていない人は居ないくらいポピュラーな地図です.今回この『山と高原地図』がiPhoneアプリの形でリリースされたので、このアプリに期待していた方々も多いかとおもいますが、残念ながら今回のiPhone版『山と高原地図』アプリは期待はずれでした.


まだ、ざっと触ってみた程度ですが、


・地図情報が紙ベースの地図と同じ内容

・画面の鮮鋭さに欠ける(地図の解像度が低い)

・デバイス(iPhone)の機能を活かしていない

・オンラインで地図情報の更新ができない

・GPSナビとしての機能が貧弱
など、不満な点は沢山あります.


このアプリの使い勝手や山岳地図の実用性の面はひとまず置いておいて、アプリの技術的な面について眺めてみました.


先ず、地図データですが単純なシングルレイヤー構造のラスター画像のようです.画像のファイル形式は不明ですが、紙ベースの地図の内容をiPhone用にカスタマイズすることなくそのまま画像データにしただけでしょう.ユーザが自分で紙ベースの地図をスキャンして取り込むのと大差有りません.背景地図はそれでも構いませんが、登山道のラインや注記情報などは情報を整理して別レイヤーで重ね合わせるとかもう少し手を加えることができなかったのでしょうか.ハッキリ言って日本の大手地図会社の仕事としてはお粗末だと思います.


地図画面が不鮮明なのは、1種類の解像度の画像を無理矢理拡大縮小表示しているせいでしょう.以前の記事で紹介したiPhone用の電子国土アプリでは、3種類の解像度のデータを組み合わせて地図画像のスムーズな拡大縮小を行っていましたが、この手法は比較的簡単に実装できるのでできればこのアプリも同様の手法を使って、拡大縮小表示を改善して貰いたいものです.地図を縮小表示したときと拡大表示の倍率との差は約5.5倍ありました.1種類の解像度の画像をこの倍率の範囲で使うのはどうみても無理があります.せいぜい0.5〜2.0倍までが画質を損なわないぎりぎりのレベルでしょう.



縮小画面
地図を縮小表示(最小)させたときの画面
拡大画面
地図を拡大表示(最大)させたときの画面


このアプリの正式対応機種はiPhone4, iPhone4SのRetinaディスプレイ搭載機種ということですので、今回試したiPhone3GSの画面では綺麗に表示されないのかもしれません.Retinaディスプレイに合わせた解像度の画像データを用意するのは大変ですね.今後は全てRetinaディスプレイになるでしょうから、アプリ制作者側としては高解像度のラスターイメージをどのようにハンドリングするか頭の痛い問題ですね.


iPhone3GSでは地図をスクロールすると画像の更新が間に合わず、タイリングされた画像が表示されていく様子を眺めることができます.このアプリでは正方タイルではなく縦長のタイルを用いて地図画像を表示しているようです.


途画面
タイリング表示途中の地図画像


『山と高原地図』は日本の代表的な山岳地図で長年登山愛好家に親しまれてきた由緒ある地図ですので、そのiPhone版も購入して良かったと思うような品質レベルであって欲しいものです.ただ単に紙ベースの地図をラスタイメージ化しただけなら、わざわざiPhone版を購入する意味はありません.

iPhoneの狭い画面では地図の一部分しかまともに表示できません.紙の地図に載っている情報を全てiPhoneの狭い画面に表示したところで画面がごちゃごちゃして鬱陶しいだけです.iPhoneの狭い画面に適応した地図の表示方法があるはずです.

ベースとなる地形図、登山道のトラックデータやランドマークの情報、標高や区間距離、所要タイムなどの各種情報を上手くレイヤーに分けて、その時々の状況に応じて必要な情報を画面に素早く表示するような工夫が必要でしょう.

また、登山道までのアクセス方法や公共交通機関などの情報などにも簡単にアクセスできる仕組みがあれば便利です.登山道の状況や積雪状況、山小屋や交通機関の情報など、出発前に必要となる様々な情報をiPhoneを通じて事前に簡単に取得できるようなワンストップサービスがあれば良いですね.

ベースとなる地形図は殆ど更新の必要がないでしょうけど、登山道の状況や山小屋などの情報は日々刻々と変化しています.このような情報をiPhoneアプリを通じて素早くユーザが得られるのであれば、皆このアプリを使うようになるでしょう.有料のサブスクリプションサービスなども考えられますね.

紙の地図では得られない付加価値があってはじめて魅力的な商品になるのではないかと思います.紙の地図という発想から脱却しない限りこのアプリの未来はないでしょう.地図の専門会社である昭文社ならではのiPhone版『山と高原地図』に期待したいものです.

 

iPhone版『山と高原地図』アプリのGPS精度については、こちらの記事を参照下さい


『山と高原地図』アプリのGPSトラックログ https://y2tech.net/trip/2012-04-30/gps_track_on_yamakou_map_appl/