大雪高原沼(緑沼)


Date/Time: 2014:09:24 10:39:28
Camera: PENTAX
Model: PENTAX K-5 II s
Exporsure Time: 1/500
FNumber: 5.6
Aperture Value: 5.0
Focal Length: 21.0

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y2blog » DA-300USBの電源廻りをグレードアップしてみた

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04

2015

DA-300USBの電源廻りをグレードアップしてみた

DA-300USBの電源をデジタル・アナログ個別供給方式に改造してみた


DA-300USB with Custom Power Supply
見た目は只のトランス方式の外部電源装置と組み合わせただけのように見えるが...

Upgrading Power Supplies
中身は電源まわりを大幅改善してセパレート電源供給方式になっている


先の記事で、DA-300USBの内部でDC/DCコンバータを用いているため、外部のACアダプタを電源トランス方式の電源アダプタに交換してもあまり効果がなかったが、DA-300USBの内部構造が把握できたので内部の電源供給方式をデジタル系とアナログ系に分け、それぞれ別系統の電源を個別に供給することで少しでも音質を改善しよう試みた.


最近のポータブルオーディオシステムでは乾電池やリチウムイオンバッテリー、USB端子などからの給電で電源を供給する単一DC電源供給方式が主流になっており、内部でDC/DCコンバータを用いてアナログ系やデジタル系などの回路で必要となるDC電源を作り出す設計になっている.DC電源を単純に降圧させるだけなら、三端子レギュレータなどで簡単に電圧を下げることができ、ノイズ的にもそれほど影響はないので高音質オーディオ回路で用いても特に支障はない.


問題となるのはDC電源の昇圧と負電源の供給で、DC/DCコンバータというスイッチング方式の電源変換処理が必要になる.負電源の方は単一のDC正電源をOPアンプやディスクリート回路などを用いて疑似的に中点をグラウンド化して作り出すことができるが、グランド電位がフローティングになってしまうので、回路の安定性や取り扱いの面でできれば避けたいところだ.最近は安くて高性能なDC/DCコンバータユニットが沢山出回っているので、専らこのような目的ではDC/DCコンバータが用いられている.


DC/DCコンバータユニットが内部で数百KHzのスイッチングをおこなっているので、高周波ノイズを周囲にまき散らすのでアナログ系の回路に悪影響を及ぼしてしまうことは避けられない.高音質オーディオの世界でDC/DCコンバータの使用など論外であることは言うまでもないだろう.


… という訳でDA-300USBの諸悪の根源であるDC/DCコンバータ取っ払って、通常のAC電源方式と同じようにアナログ回路やデジタル回路などの電源を個別に供給する事を検討してみる事にする.


尚、この記事では電子工作の知識の無い人達が安易に改造に手を出して失敗して後悔しない様に、敢えて具体的な改造手順や回路図等は記載しないので、自分の電子工作スキルとこの記事で紹介してある内容を照らし合わせて、自分で改造可能かどうか判断して欲しい.電子工作にかなり慣れた人でなければ今回と同じような改造を行う事は難しいかもしれない.



先ずはノイズの供給源となってしまうDC/DCコンバータを取り払う


DA-300USBのDC/DCコンバータはメインボードとは別のドータカードになっており、8Pのピンヘッダ二対を介してマザーボード側と接続されている.取りはずしたDC/DCコンバータは二度と再利用することはないと思うが、メインボードの空きスペースが勿体ないので、8Pのピンヘッダソケットをメインボード側に取り付け、取りはずしたDC/DCコンバータをそのまま戻すこともできるようにしてある.


Remove DC/DC convertor
DC/DCコンバータは8Pヘッダを介してメインボードに接続されている

Reusable DC/DC Convertor Module
8Pヘッダソケットをメインボード側に取り付け、自分でアドオンドータカードを搭載できるようにしておく


三端子レギュレータを取り外しコネクタを取り付ける


DC/DCコンバータの +/- DC 11V の出力は、アナログアンプ系の DC +/- 9V 用の三端子レギュレータ(7809/7909)とDAC用のDC+5V、DC+3.3V用の 三端子レギュレータ(7805)に供給されている.7805の出力は更にデジタル系用とアナログ系用の2系統のDC +3.3V系のレギュレータに供給されるようになっている.


メインボード用に、DC +/- 9V、DC +5V, DC +3.3V(アナログ)、DC +3.3V(デジタル)の合計5系統を個別に供給できれば理想的なのだが、それも大変なのでとりあえず改造し易い三端子レギュレータ(7805,7809,7909)に着目して、3系統のDC電源を供給できるようにしてみる.安直に DC/DCコンバータの出力側に DC +/- 12V を突っ込んでも良いが、ノイズを少しでも減らしたいのでこれらの三端子レギュレータを取っ払うことにする.こうしておけば後でOPアンプなどのアナログアンプ系の電圧を変更する事が容易になる.


取り外した三端子レギュレータの跡地には、日圧のXHシリーズなどの2.54mmピッチのコネクタを取り付けておけば外部からの給電にとても便利だ.正電源用の78xxシリーズのピン番号は、1番が入力側、2番がGND、3番が出力になっており、負電源用の79xxシリーズは1番がGND、2番が入力側、3番が出力になっているので、出力側のピンに直接外部から電源を供給すれば良い.


Replacing IC regulators
三端子レギュレータの跡地に日圧XHシリーズのコネクタを取り付け、
外部から直接給電テストしてみる



外部給電制御用のドータカードの作成


DC/DCコンバートの跡地の有効活用として、外部給電を制御する簡単なドータカードを作ることにした.猫の額ほどの小さなスペースなので本格的な制御回路を搭載することはできないので、DA-300USBの電源スイッチに連動して外部給電系も自動的にON/OFFできるようにしておくと都合が良い.幸いなことに、DC/DCコンバータの入力側にはDA-300USBの電源スイッチに連動した DC+15Vが給電されているので、これをそのまま外部給電の制御に使うことにする.


回路は至って簡単で、OMRONの小型DCリレー G5V-2(DC12V) を使って外部給電回路のON/OFFを制御しているだけだ.デジタル系の制御ボード側からはDC +15Vが供給されるが、そのままでは過電圧なので、0.5Aタイプの三端子レギュレータ 78M12 を使ってリレーの電圧に合わせてある.リレーの駆動で1個当たり20mA程度消費するが、元々DC/DCコンバータで消費していた電力に較べれば微々たる物だろう.リレーを駆動したくない場合は、ジャンパーピンを外せばリレー駆動回路を遮断する事も可能だ.DA-300USBの電源スイッチに連動させる必要がなければ、メインボード側の給電ポイントをリレーのCOM接点側につないでおき、リレーのNC接点側に外部給電回路をつないで置けば良い.ドータカードにはリレーのNC側とNO側につながっている両方の外部給電コネクタを用意してある.


Adding relay control circuit
外部電源制御用のリレー回路をドーターカードに載せる(コネクタはNC側とNO側の両方を用意してある)


デジタル制御系のボード用の電源を検討する


メインボード側の電源環境はほぼ目処がついたところで、USB回路やDIRチップ、DSPなどのデジタル系のドータカードの電源について検討してみることにする.デジタル系の電源としては通常は+5Vか+3.3Vで回路設計を行うことが多いが、DA-300USBの場合は元々外部から単一の+15Vを供給するという前提で全てのボードが設計されているので、デジタル系の電源を+5Vあるいは+3.3Vで供給するには、デジタル処理系ボードの電源系統を詳細に調べなければならない.これは大変困難な作業で、メインボード側の+15V供給の問題もあるので、今回は面倒な事は止めてそのまま+15Vをデジタル系の処理ボードの電源として使うことにした.


メインボード側のリレーの駆動電流分を入れてもデジタル制御ボード系の消費電流は実測で約260〜280mA程度であった.改造前のDC+15V単電源入力時の消費電力の半分程度なので、デジタル制御ボード系の電源としては +DC 15V 400〜500mA程度の供給力で問題無いだろう.デジタル系の電源なのであまりノイズを気にする必要はないが、スイッチング電源という訳にも行かないので、手持ちの電源レギュレータICのLM350を使って簡単なDC +15V安定化電源を作成した.前回の電源回路をそのまま使っても良いのだが、必要以上に大きな電源トランス(S.E.L SP-162 16V2A)と大容量電解コンデンサや秋月電子のローノイズレギュレータ基板は勿体ないので、ケース(IDEAL C0-80D)だけ流用することにして、電源回路や電源トランスは全てリプレースすることにする.


外付け電源ボックスの作成


電源用のケースは前回使用した物をそのまま使うことになるので、このケースにアナログアンプ系の +/- 12〜15V、DAC用のDC +5V、それにデジタル処理ボード用の +15V の4系統の電源を載せなければならない.電源トランスの2次側を4回路用意するのはスペース的に難しいので、今回は手持ちの小型トロイダルコアトランスを2個使用することにした.ケースの高さが80mmと比較的余裕が在るので、電磁気的には誘導ノイズなどの点で好ましくは無いが、トロイダルトランスの2段重ねで無理矢理押し込むことにした.


トロイダルコアトランスは共立エレショップが販売している物で、


HDB-12(8V)

HDB-30(L)

を用いた.HDB-30(L)を アナログアンプ系の +/- 12〜15V用の正負電源用に使い、HDB-12(8V)の方はデジタル信号処理ボード用の+15VとDAC用の+5V用の電源に用いる.HDB-12(8V)の2次側の電圧は [ 出力:0V(灰)-8V(橙)/500mA、0V(黒)-18V(黄)-36V(緑)/200mA ] なので、デジタル信号処理ボード用の+15V用に必要となる300mA程度の電流を供給するのには向いていないが、センタータップによる両波整流回路にしてある.今後、もう一回り大きな容量の適切な電源トランスに置き換える予定だ.


電源回路も4系統載せるのは大変なので、今回はストロベリーリナックスが販売している小型のローノイズタイプの電源制御モジュール “TPS7A4700 超ローノイズ・レギュレータモジュール(正出力)”“TPS7A3301 超ローノイズ・レギュレータモジュール(負出力)”を活用してスペースの有効利用を謀ることにする.このモジュールを使えば72x48mmのユニバーサル基板上に、高性能な +/-電源をコンパクトに作成することが可能だ.


4系統の電源ケーブルを個別に引っ張り出すのは大変なので、今回は音質的には好ましくはないが一本の多芯ケーブル(8芯)でDA-300USB側に給電することにした.オヤイデ電気で売っていた “VVC-018 BANDO DENSEN” という外径6mm程のケーブルだが、できればもっと太くて性能の良いケーブルを使いたいところだ.DA-300USB側の背面のDCジャックを取り外した角穴(W:9.5mm, H:11.2mm)に通す事ができれば良いので、もう少しグレードの高いケーブルを用意した方が良かったかもしれない.電源ケースからの出力用のコネクタとして、電線の外径の制限から、8ピンタイプの多治見無線電機製の丸形コネクタ(R29-J8M/R29-R8F)を使用したが、こちらも使用ケーブルとの兼ね合いもあるので、ある程度の妥協が必要かもしれない.


アナログアンプ系用の正負電源モジュールの電圧は、メインボード側のOPアンプやヘッドフォンアンプ部のディスクリート回路の電圧設計値に合わせて、+/- 9V にしておくのが一番無難だが、OPアンプやディスクリート回路部の供給電圧としては通常はもっと高くても大丈夫だろう.どの程度まで許容可能なのかは、きちんと回路図を起こして各部品の許容範囲や回路設計などを調べなければ判らない.+/- 9Vというのは、入力側のDC+15VをDC/DCコンバータで +/- 11V 程度の出力電圧から三端子レギュレータによる安定化回路のドロップダウン電圧を考慮した結果でそうなっただけだろう.試しに +/- 15V で駆動してみたが、アナログアンプ部が歪んだりノイズが増えたりしてはいないようなので、とりあえずアナログアンプ部の供給電圧は +/- 12V で運用している.


External Power Unit
手前側から DAC用+5V、デジタル処理系 +15V、アナログアンプ系の負電源、正電源モジュール

Output Connector
今回は使い勝手を考えて電源ユニットの出力は丸形のマルチコネクタを使用した

Power receiving control unit
背面のDCジャック穴を利用して取り込んだ多芯ケーブルの先を
給電部に接続する(緑・灰:DAC 5V、黄・青:デジタル系)



肝心の音質はどうかというと、実験で外部電源装置から比較的太めで30cm程度の太めのケーブルで給電した際には、音質的にかなり効果があったと感じたのだが、細目の多芯ケーブルで2m程度引き回した場合は、やはり音質の劣化は避けられない様だ.当たり前と言えば当たり前なのだが、電源供給用のラインは極力短く低インピーダンスに徹するというのが、オーディオに限らず全ての電子回路に共通のセオリーである事を痛感した次第である...


電源のインピーダンスに関して、”new_western_elec” さんのブログで『電圧レギュレータの種類と特徴 LDOとは何か』という記事で、LDO型のレギュレータICと旧来型のレギュレータICと回路方式の違いについて述べられており、出力段のトランジスタがコレクタ出力(LDO)とエミッタ出力(旧来型)で、出力インピーダンスが大きく違う(エミッタ出力の方が圧倒的に低い)という事が解説されている.


今回、アナログ系の電源レギュレータにLDO型のTPS7A4700を用いたが、最初のメイン基板への直接電源供給実験の際にはLM317/LM337による旧来型の可変レギュレータを比較的太めのケーブルで短距離配線していたので、電源廻りの出力インピーダンスという点では大きく異なっているのかもしれない.改造を終えて最終的な完成状態で音を聞いた時に、途中段階の実験で音を聞いた時とかなり違和感を感じたのは、この事が大きく影響しているのかもしれない.


やはり外部電源ボックスによるセパレート給電方式ではベストな結果が得られないのかもしれない.DA-300USBのケースをそのまま使用する事は諦めて、ちゃんとしたケースに電源回路と共にDA-300USBの基板モジュールを配置するのがベストな選択なようだ.微少な信号を扱うDAC部の電源はローノイズLDOタイプの電源レギュレータを使い、アナログアンプ系は多少ノイズがあってもローインピーダンス電源供給が可能な旧来型の電源レギュレータICを使うという方針で行こうと思う.


DENONのDA-300USBに関しては結構シビアな評価だったかもしれないが、私自身は買って良かったと思っている.何よりも久々に改造マインドをくすぐるいじり甲斐のある製品で、結構楽しんで遊ばせて貰った.コストパフォーマンスも良く、オーディオの大メーカーブランドの入門用DACとしてはこんな物かもしれない.次回のDENONブランドDAC製品は、もう少し電源廻りに拘った名器と呼ばれる製品が登場する事を期待している.



【追記】DA-300USBの中身をタカチのケースに入れてみた


外部電源BOXからの給電ではどうしても電源ユニットとDA-300USB本体の距離が長くなるので音質的に好ましい状態とは言えない.先日部品調達のため秋葉原界隈を彷徨いていたら、ラジオデパート2Fのエスエス無線さんでタカチのHIT23−7-18BBというケース自体がヒートシンクにもなっているデザイン的にもまあまあなケースが展示されていた.DA-300USBを内蔵電源方式で使うのに手頃そうだったので試しに購入してみた.


本体基板だけであればこのケース余裕だが、デジタル系の+15Vとアナログアンプ部の+15V/-15V、それにDAC用の+5Vの4電源をこの空間の中に組み込むのは流石に大変で、電源トランス同士の隙間やメインボードの上部のケースとの隙間などに無理矢理電源基板を押し込むことで何とか電源部の空間を確保することができた.


現時点ではフロントパネルの入力セレクタのタッチセンサースイッチ部分のLEDバックライトがそのまま表示されてしまう状態なので、今後入力セレクタースイッチである事を簡単に理解できる様な絵柄が浮かび上がる様に手直しをしようと思っている.


DA-300USB with HIT23-7
タカチのHIT23-7-18BB を用いて無理矢理電源内蔵タイプに変更してみた

ケースに合わせてフロントパネルも自作した
ケースに合わせてフロントパネル部もアクリル板を組み合わせて自作してみた


【追記】超ローノイズタイプのレギュレータは音質的にはやっぱりNGかも?


DA-300USBの中身を一回り大きめのアルミシャーシに入れてトランス方式の内蔵電源タイプへ改造してみたものの、どうも音質的にしっくり来ないというか、どうも最初の実験で聞いた時の音のクオリティーに達していない.やはりこのしっくり来ない原因は超ローノイズレギュレータそのものに有るのではないかと考え、実験時と同じ可変電圧タイプの三端子レギュレータ(LM350/337)に変更することにした.


実際に電源ユニットを取り替えてみると、明らかに三端子レギュレータの方が音がクリアで力強さが感じられる.この辺はあくまでも個人の主観の領域の問題なので人によっては超ローノイズタイプのレギュレータの方が音が良いと感じるかもしれないが、私個人としては今後のアナログ系のオーディオ装置の電源に関しては、ノイズ特性よりもローインピーダンスである事を重視することにしようと思う.


Customized DA-300USB
可変電圧タイプのレギュレータIC(LM350/337)に変更



現在のDA-300USB
デジット(共立電子)のデジタルオーディオ実験キット(左)と現在のDS-300USB

デジタル系の+15V電源用に使っていたカットコアのトランスは0.3Aの定格だったので完全に容量不足状態で、トランス本体の発熱も気になったので、一回り余裕の在る0.45Aタイプの物に変更したついでに、トランスや電源基板の配置も工夫してみた.このケースで蓋をすると、夏場は高温になり過ぎるので常時蓋を外した状態で使用している.


デジットのデジタルオーディオ実験モジュールを使って、サンプルレートコンバータを使ったアップサンプリングの実験などを行っている.DA-300USBの場合は自分でパラメータなどを変更することは難しいが、デジットのモジュールは設定を色々と変えて音作りを楽しむ事ができる.デジットのDACモジュールで使われているチップはPCM1792という事もあり、DA-300USBの線の細い繊細なサウンドとは大きく異なり、とてもエネルギッシュで重厚なサウンドだ.ロックやJAZZ系などを楽しむ場合はデジットのモジュールの方が私の好みだ.