毛無山より富士山を望む


Date/Time: 2019:12:08 13:53:48
Camera: Apple
Model: iPhone SE
Exporsure Time: 1/1709
FNumber: 2.2
Aperture Value: 2.3
Focal Length: 4.2

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2018

ES9038PROのI/V変換あれこれ

ES9038PROのI/V変換を見直してみた


音出しテスト中
RENEW POWER-IV-A 基板を使って音出しテスト

ESS社のフラッグシップDACであるES9038PROについては、DIYINHK製の幾つかの基板に実装して色々と音出しテストを重ねてきたが、今一つ満足の行かない状態で、私のメインのDACマシンは旭化成マイクロエレクトロニクスのAK4497EQだった.


ご承知のように、ES9038PROは一つのチップの内部に8個のDACモジュールが搭載されており、最大で8チャネルの出力が得られる.恐らくホームシアター用のAVアンプでの利用を想定した物だろうが、この8チャネルの出力をユーザ側で自由にチャネルアサインできるようになっている.デフォルト状態では、DAC #1,#3,#5,#7 がLチャネル、DAC #2,#4,#6,#8が Rチャネルの 2ch. ステレオとなる.この際に片側4個のDAC出力が合成(電流加算)されて出力されることになる.


勿論、一つのチップをモノラルモードで使うことも可能で、この場合は8個のDAC出力が合成されて出力されることになる.ESS社のカタログスペックでは、DNRの値は

  mono differential current mode: 140 [dB-A]
  stereo differential current mode: 137 [dB-A]
  8ch differential current mode: 132 [dB-A]

となっており、THD+N : -122 [dB] という値になっている.


最初にES9038PROのスペックを見た時に一寸驚いたが、どうやら8個の強力なDACモジュールを力尽くでぶん回してこの性能を無理矢理達成している感がしないでもない.


これまでのDACよりも遥かに強力なDACモジュールを積んだES9038PROなのだが、その大出力故に後段のI/V変換処理が大変な事になってしまっている.monoモードで8個のDAC出力を合成すると、フルスケールでは何と120~130[mA] もの大電流がDACから出力されてしまう.オーディオ用の一般的なOPアンプではとてもこのような電流を受け止める事はできないので、大電流に耐えられる特殊なOPアンプか、汎用的なOPアンプの後段にバッファータイプと呼ばれるOPアンプをカスケードして使うことになる.


I/V変換をOPアンプを使わずに、ディスクリート回路で組めば大電流に耐えられる物が作成可能だが、トランジスタや抵抗、コンデンサなどの膨大な部品と格闘しなければならず大変だ.2~3個のOPアンプとコンデンサや抵抗数個の組みあわせで済む世界とは大違いだ.


そこで、今回はお気楽オーディオさんの力をお借りして、ES9038PRO用のディスクリートI/V変換モジュールを試してみることにする.今回は、

  RENEW POWER-IV-A  : 製作マニュアル
  RENEW POWER-IV-C : 製作マニュアル

の2種類のディスクリートI/V変換基板キットを試してみることにした.


このPower-IVシリーズは、LH0032という高速汎用OPアンプの回路を、汎用的なディスクリートTR素子と抵抗で置き換えたものなので、一般的なディスクリートアンプ回路に較べると、比較にならないくらい使われている素子が多い.その代わりと言っては何だが、使い勝手は汎用OPアンプそのものなので、面倒な各種パラメータの調整等を行わずとも、バイアス電流などの簡単な調整だけで動作させる事が利点だ.


LH0032をディスクリート素子で置き換えた時の記事が、お気楽さんのホームページに載っているので、中身を詳しく知りたい方はこちらを参考にすると良いだろう.


 『LH0032をつかったIV/差動合成基板を作る!の巻き 2009.11.24
 http://www.easyaudiokit.com/bekkan/LH0032/LH0032.html

お気楽さんのホームページはお目当てのページに辿り着く事が難しいのだが、ES9038PRO関連のI/V変換について詳しく解説されているので、ES9038PROを使いこなしたい人は是非とも一度通読しておくと良いだろう.


 『ES9038PROを入手しました。AK4497も!(PART-4) 2017.1.8』
 http://www.easyaudiokit.com/bekkan/es9038pro/es9038pro4.html

 『パワーオペアンプはどうしよう?の巻き 2017.1.10』
 http://www.easyaudiokit.com/bekkan/power_opamp/power_opamp.html

実は、お気楽さんの RENEW POWER-IV-A 基板は昨年末には入手していたのだが、年末年始の引越しを行った関係でずっとお預けになっていたが、この連休でようやくまともに半田ごてを握れる環境になったので作業を開始したという次第だ.


先ずは、RENEW POWER-IV-A


RENEW-POWER-IV-A with DIYINHK ES9038PRO
スペースの関係でRENEW POWER-IV-A 基板の上にDIYINHK ES9038PRO基板を載せる

Output check
左チャネル(1KHz:下段)、右チャネル(2KHz: 上段)の正弦波信号でチャネルと位相を確認
左チャネルの I/V変換抵抗値は 24Ω、右チャネルは 47Ωで試験しているので、左右の振幅が異なっている


今回は、RENEW POWER-IV-A 基板の製作の過程を記録していなかったので、製作の様子は省略してしまったが、100個以上のTRが基板に実装するのは結構大変なのだが、昔懐かしい黒いTRが大量に並んでいる様は圧巻だ.これを見ているだけで何となく達成感がひしひしと伝わってくるから不思議だ.今回使用したのは、お馴染みの小信号用の2SA1015GR, 2SC1815GR とPower TRのTIP31C/TIP32C の組みあわせだ.東芝製の純正品在庫が殆ど無くなってしまい、今売られているのは大部分が、得体の知れないセカンドソース製品となってしまったが、大量かつ安価に入手できるようなので、もう暫くはこれらのTRが市場から無くなることはないだろう.


RENEW POWER-IV 基板は昔ながらの樹脂モールドパッケージ意外にも、チップトランジスタが使用可能な配線パターンとなっているので、好みに合わせてTRを選択すれば良いだろう.


Layout
左右完全独立電源で組みたかったが、スペースの関係で今回は左右共用電源となってしまった

左右独立電源ボード化
トランスを左右2セット用意することはできなかったが、とりあえず左右独立電源基板化達成
アナログ +-15V系 左右2系統、アナログ 3.3V 左右2系統、デジタル 3.3V系 2系統(OSC用, DVCC用)
コンピュータ(BeagleBone Green)用トランス、電源基板は完全独立した系統を用意

さて、肝心の音質はどうかと言うことだが、完全ディスクリート構成だからという訳ではないだろうが、全体的にクリアで安定感のある心地良い音に聞こえる.OPアンプ+ Buffreアンプの組み合わせで無理矢理動かしていた音とは大部異なっているように感じた.まだエージングが済んでいないが、BeagleBone Green + lightMPD Botic7 + RENEW POWER-IV 基板の組みあわせが、今後の私のメインDAC環境となりそうだ.


RENEW POWER-IV-C 基板はこれから製作に取り掛かる予定だが、樹脂モールドタイプのTRの余剰がなさそうなので、今回はチップトランジスタに置き換えて製作する予定だ.回路的にはRENEW POWER-IV-Aと同一なので、音の傾向は同じだろう.ES9038PRO基板2枚 + RENEW POWER-IV-C基板2枚を使って完全デュアルモノ構成で組んでみようと思う.


とりあえず、今回は RENEW POWER-IV-A によるES9038PROの音出しに成功し、満足が行く結果が得られたことを報告しておくことにする.近日中に、Lundahl のアウトプットトランス LL1582 を用いたI/V変換についても取り組みの様子を報告する予定だ.


RENEW POWER-IV-C をアセンブルしてみた


…という訳で連休最終日を利用して秋葉原へのパーツ買い出しと RENEW POWER-IV-C 基板に部品を実装し通電可能な状態まで仕上げた.今回の Power IV 変換基板の実験にあたり、以前製作していた DIYINHKのES9038PRO基板のDAC出力部分を後段のI/V変換に行く手前で配線パターンをカットして、DACの差動出力電流を取り出せる様に改造してある.同じくES90x8 Reference基板の方もI/V変換抵抗やローパスフィルタ部分の抵抗やコンデンサを取り外して、DACの差動電流出力を取り出せるように改装済みだ.使わなくなったOPアンプによるI/V変換、差動合成アンプの上のスペースを利用して、Lundahlのアウトプットトランスを実装する予定だ.


まだ、部品を実装していなかったもう一枚のES90x8 Reference基板は真ん中付近で基板を半分に分割して、DAC関係部分だけを活かした状態にしてある.無駄なスペースが多い(その分弄りやすい)ES90x8 Reference基板を本番環境で使うのはちょっと考え物だが、試験環境としては実に手頃で色々と遊べそうだ.



The RENEW-Power-IV-C board
RENEW POWER-IV-C 基板(左側:チップトランジスタを実装する基板裏面側、右側:抵抗や電解コンデンサ、Power TRなどを取り付ける基板表面)

LT3042 Power regurator
RENEW POWER-IV-C 基板にはDACオフセット電圧発生用のローノイズ電圧発生回路用のパターンが実装されている

必需品かな?
老眼おやじには実体顕微鏡は必需品かも...

チップトランジスタ実装完了
100個近いチップトランジスタを半田付けするだけで骨が折れる...

ES90x8PRO Reference Board
ES90x8PRO Reference Boardは実験用途には最適かも...

ES9038シリーズ全員集合
ES9038PRO 関係のボード全員集合!!!

DIYINHKのES9038PRO関連基板のI/V変換のパラメータを調べてみる


毎度御用達のDIYINHKのDAC関連基板キットについてはこれまで幾つか紹介してきたが、ES9038PRO関係の回路設計や実装方法などについてもう少し詳しい情報が欲しいところだが、例によって例のごとく親切なマニュアル類など一切無いので、自分で基板を回路パターンや使われている表面実装部品を調査するしか方法がない.かなり面倒な作業だがDIYINHKさんとお付き合いするにはこれしか方法がないので、初心者は深入りしない方が良いだろう.



ES90x8PRO Reference board
DIYINHK ES90x8 Reference基板のI/V変換廻りの配線パターン

DIYINHK ES9038PRO board
DIYINHK ES9038PRO基板のI/V変換廻りの配線パターン


つづく...