大峰山八経ヶ岳からの眺め


Date/Time: 2016:05:02 06:20:30
Camera: PENTAX
Model: PENTAX K-5 II s
Exporsure Time: 1/320
FNumber: 7.1
Aperture Value: 5.7
Focal Length: 21.0

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2019

CES2019でのDAC関連の動き

CES2019で発表されるDAC関連の話題を拾ってみた


1/8からラスベガスで恒例のCESが開催されるが、デジタルオーディオ関連ではESS社とAKM社から新しいDACチップが公開されるというアナウンスがプレスリリースなどを通じて行われている.


ESS社はMQAコーデックを内蔵したDACチップ ES9068Q、USBインタフェース一体型のES9281PROがESSのホームページで概要を発表している.



ESS社はMQA対応を今年の目玉にしているようだ.MQAについてはここ1年ほど日本でも話題となっており、MQAに対応したアプリケーションや対応DACの数も増えてきたので、そろそろ本格的に普及しそうな気配があるが、ハイレゾストリーミング環境としてはMQAが適していそうだ.残念ながら日本ではTIDAL MASTERSなどの高音質ストリーミングサービスが展開されていないのが残念だ.


私の聴く音楽はほぼ100%海外の音楽なので、日本発のストリーミングサービスでは話にならないので、TIDALが簡単に日本でもサービスを受けられるようになるとうれしいのだが...


MQAに関しては現在の私の環境では、ソフトウェアデコーダ(Audirvana Plus 3, Roon 1.5など)ぐらいしか選択肢がなく、AudirvanaはV2.0、Roonに関してはサブスクリプションを廃止してしまっているので、MQAの効果を検証する術がない.MQA対応DACは数も少なく、何れも高価(iFi製品でもそこそこの値段)なので入手する可能性は殆どないだろう.


XMOSやXILINXなどのFPGAやDSPなどでMQAのデコーダを作りたくても、MQAは一企業であるMeridian社が開発し、特許などでがんじがらめの状態だろうし、ライセンシーのMQA社との間でMQAに関する契約を結ばない限り、情報は得られないだろう.


Audirvanaのホームページで Audirvana Plus 3.1 のリリースノートに、USB直結DAC意外に、UPnP/DLNAネットワークプレイヤーにも対応するというアナウンスがされている.今のところ、ONKYO/Pioneer製品(Pioneer N-70AE, Pioneer N-50AE, Pioneer N-30AE, Pioneer N-70A, Pioneer N-50A, Onkyo NS-6130, Home Cinema Receiver VSX-1131)しか検証( Certification: ”Works With Audirvana Plus” )できていないようだが、対応が取れた製品には ”Works With Audirvana Plus” を貼って出荷するということのようなので、汎用的なUPnP/DLNAネットワークプレイヤーであれば接続できそうだ.


MQAの技術的な特徴や性質は優れていたとしても、一企業のプロプライエタリでクローズドな技術である限り手を出したくないというのが私の本音だ.果たしてMQAが高音質ストリーミングの世界を牛耳ってしまうのか、それともMQAに代わる別なオープン規格が現れるのか引き続き注目していきたい.勿論、自作派の私としては、オープンな規格を推進して行く所存であることは言うまでも無い.



【追記】Audirvana Plus 3.2.13(3145) の15日間試行ライセンスでUPnP/DLNAプレイヤーで再生できるかどうか確認してみたところ、我が家のUPnP/DLNAプレイヤー(メーカー製品:SONY BDP-S6200, YAMAHA R-N602、自作系:LMPD-xxxx)をきちんと認識し、Audirvana Plus 3.2から問題なく再生可能であることを確認した.


手許にあったUniversal Music JAPANが制作したMQAデモCDサンプルのデータもMQAデコーディングして再生してくれた.音質の好みはさておいて、MQAでの再生と一般のCD音源とでの再生では明らかな違いを誰でも認識できるだろう.ただ、今回試聴に使ったMQAデモCDサンプルの収録曲の音作りやAudirvanaのMQAデコーダの音作りのせいかもしれないが、長時間聞いていると聴き疲れしてしまうのは私だけだろうか... 同時にパッケージングされているもう一枚のノーマルCD 16bit/44.1KHz も同じような音作りがされていたので、音源の方に問題が有りそうだ.


2018年6月にUniversal Music JAPANから一挙に100タイトルの MQA CDがリリースされているが、皆こんな感じの音作りなのだろうか?Roxy Music の”Avalon”(1982)はリリース当時のアナログ盤をまだ持っているが、30年以上後にリリースされたMQA CD版とで聞き較べをしてみたいものだ.


FLAC形式のファイルは拡張子の “.flac” の直前に “.mqa” を付けなければMQAデータとしては認識してくれなかったが、この辺の仕組みはもう少し検証してから報告しようと思う.



Selecting Network Audio Devices
UPnP/DLNAネットワークオーディオデバイスをきちんと認識している

Adding MQA Extention
ファイルの拡張子の問題が有ったが、MQAデータもきちんと再生できているようだ

DAC Playing Specs
DAC側の再生スペックはMQAソフトウェアデコーダの仕様で 88.2(96)kHzとなっている

MQA Audio Data Specs
MQAデコードされたデータ自体は24bit/352.8kHzのハイレゾデータとして扱われている


一方、AKM社は従来の2ch電圧出力タイプのDAC(AK4493/4495/4497)から、新しい電流出力タイプの4chDAC(AK4499EQ)を12月の時点でプレスリリース(「2018/12/07S/N 140dB 低歪 -124dBを達成、フラグシップ オーディオDAC VERITA AK4499 を開発」を行っている.



AKM社のホームページ(https://www.akm.com/image.jsp?id=599277)より画像を引用


これまでのAKMのDACと大きく異なるのは、AK4499EQが完全な電流出力タイプということだろう.ESSのハイエンドDACの ES9018/ES9028PRO/ES9038PRO などは基本的には電流出力型のDAC(I/V抵抗と入力回路のインピーダンスの組み合わせによっては電流出力的な使い方も可能)だ.


今回、AKMが従来の電圧出力型から電流出力型に切り替えた経緯は不明だが、ES9038PROの8チャンネルのDAC回路を束ねた力業作戦で”DR,S/N”や”THD+N”などのスペックの向上を狙ったのかもしれない.カタログスペック上では、確かにAK4497EQはES9038PROと較べると多少見劣りするが、そんなカタログスペックよりも肝心の音質の方が重要であることには異論はないだろう.


個人的にはAK4497EQの音質の方が好みなのだが、DACとしての扱い易さやあまり考えなくても簡単に音出し可能なESS社のDAC機能の実装技術はAKMよりもESS社の方が格上だろう.音質的にはAKMが売りにしている「VELVET SOUNDテクノロジー」を半導体製造プロセスに採り入れているということなので、ひょっとするとAK4497EQを凌駕するのかもしれない.


AK4499EQのカタログスペックによると、DAC機能は32bit 4ch、THD+N: 134dB、DR, S/N: 134dB(140dB Mono Mode)、768KHz/22.4MHz、消費電力: 667mW となっている.モンスターDACチップで、パッケージサイズも128-pin HTQFPと巨大だ.


ES9038PROの場合は8ch束ねたMono Modeで最大約130mA 程度の出力電流が流れることになるが、AK4499EQの場合は4ch束ねたMono Modeでどの程度の出力電流となるのか知りたいところだ.いずれにしろ、高音質オーディオ用として出回っている OP Amp(JRCのMUSEシリーズやTI OP627など)ではI/V変換回路としてそのままでは到底太刀打ちできないので、I/V変換以降の回路設計は相当工夫が必要だろう.因みに、私はES9038DPRO DACのI/V変換とAK4497EQ用の出力用にお気楽オーディオさんの Renew Power I/V基板を改造して使用している.Renew Power I/V基板に関してはまた別な機会に紹介しようと思う.




AKM社のホームページ(https://www.akm.com/akm/en/product/datasheet/images/AK4499EQ.gif)より画像を引用

このブロック図からだけでは細かな仕様は判らないが、”PCM/DSD Automatic Switching” というブロックが左側の入力部分にあるので、PCM/DSDの切り替えはESS社のDACのように自動的に行う機能が備わっているようだ.実は先のAK4493EQチップにもこの機能は備わっているのだが、残念ながらハードウェア(ピンコントロール)モードではこの機能が働かないので、ハードウェアモードでも簡単にPCM/DSDが切り替わる仕様であることを期待したい.(ESSのDACチップはハードウェアモードでもPCM/DSDの完全自動切り替えを実現している)


DACと周辺回路のクロック同期のメカニズムに関しては、従来のDAC側スレーブモード(マスタークロック[MCK]、LRフレームクロック[LRCK]、ビットクロック[BCLK]、データ[SDATA] を外部からDACへ供給)しか対応していないようだ.なおES9038PROなどのESS社のハイエンドDACはDAC側スレーブ/DAC側マスターのどちらにも対応可能だ.


DACクロックのマスターモード、スレーブモードについては、たかじんさんのホームページ(「DACのマスタークロックについて ESS社はちょとかわっている?」)に分かり易い記事が載っているので、こちらを参照すると良いだろう.


AK4499EQと簡単に組み合わせられるI/V変換用のOP Ampも一緒に出して貰えると良いのだが...データシートの提供は4月頃との事なので、その頃にはもう少し具体的な仕様が明らかになっていることだろう.それにしても128pinも何に使うのだろう?パッケージのサイズに合わせてピン数も増やさないといけないので、ダミーのピンや複数のピンに同じ機能を割り当てているのだろう.基盤のパターン設計が大変そうだ...