12
05
2016
DIYINHK AK4497EQ 基板
DIYINHK AK4497EQ 基板の概要
1週間以上前に注文していた DIYINHK のAK4497EQ DAC 基板がようやく届いた.Honkong Postの怠慢で、Honkong国内に5日間も留め置かれてしまった.いつもなら3〜4日程で届くのだが、今回は9日もかかってしまった.郵便料金返せ!!!
今回のDIYINHKのAK4497EQ基板には肝心のDACチップは搭載されていないので、自分でAK4497EQを調達して半田付けしなければならない.AK4497EQは最近まで市場に殆ど出回っておらず、一部の特別なユーザ向けにサンプル出荷されていたに過ぎなかったが、11月下旬になってようやく市場に出回るようになったようだ.
AK4497EQチップは、この基板が届く前にDigi-Keyから2個購入してある.但し、日本円換算で1個5,876円もする.そのうち安くはなるだろうが、この値段では気軽に自作に挑戦とは行かないだろう.果たしてこれまでの最上位DACAK4495SEQを凌駕する音を奏でてくれるのだろうか.今度の週末にでも音出しをしてみようと思う.
追記:DACチップを実装して音出ししてみた [ 5/14 2017 ]
年末からGWまで仕事の関係や自宅の引っ越しなどで全く半田ごてすら握れない状況が続いていたが、GW開けからようやく半田ごてを握れるようになったので、AK4497 DACチップを実装してみた.DIYINHKのホームページでは、ヒートガンを使ってDACチップを半田付けする方法が紹介されているが、表面実装部品のリワークに習熟した人でも無い限りこの方法はお薦めできない.64pinのHTQFPパッケージの端子面をヒートガンで指定された温度で局所的に加熱するのは難しい.私は最初この方法を試してみたが、上手く行かずに基板を焦がしてしまい、一部のパターンが剥がれてしまった.DACチップも1つお釈迦さまにしてしまった.
極細チップの半田ごてを使って、注意深く各ピンを半田付けする方が確実だろう.真ん中のベタパターンだけは半田ごてではどうにもならないので、予め真ん中をドリルで穴を開けて半田を裏から直接加熱すればDACチップの裏面の金属面(サーマルパッド)に半田付けできそうだ.DIYINHKのAK4497EQ基板は単純な両面基板なので、この穴開け方法でも問題はないだろう.半田付けに自信の無い場合は多少お値段が高くつく(139.95 USD)が、最初からDACチップ実装済みの基板セットを購入した方が無難だ.
今回の音出しテストは、DACチップのレジスタ制御を行うソフトウェアの製作が間に合っていないので、とりあえずピン制御モード(ハードウェア制御)モードでPCMで行った.DIYINHKのXMOS 768kHz DXD DSD512 USBインタフェース経由の場合は問題なく再生できたが、Beaglebone Black/Green + Botic 7 による I2S ダイレクトインプットの組みあわせでは最初再生ができなかった.
I2S ダイレクトインプットが失敗した原因を探ってみると、最初の失敗は単純にBotic 7のマスタクロックを 45/49 MHz に設定していた事が原因だった.AK4497のデータシートをよくよく見直すと設定可能なマスタクロック周波数は最大でも 36.8640MHz だった.マスタクロックの水晶発振器を 22/24 MHz系列に差し替えて再度挑戦するものの又しても音が出なかった.
Beaglebone Black/Green + Botic 7 と 他のDACチップ( ES9018K2M など)の場合は問題無く音がでているので、どうやらAK4497 ボード側に問題がありそうだ. XMOS 768kHz DXD DSD512 USBインタフェースで音出しをした後、DACチップの電源を切らずに入力をBotic 7 側に切り替えると普通に音が再生される事が判った.
XMOS 768kHz DXD DSD512 USBインタフェースとBotic 7 のI2S出力で何が違うのか推測してみると、DACチップの Power Downリセット信号(AK4497チップの pin #2 のPDN信号)のハンドリングが異なる事が原因なのではないかと思われる.恐らく、XMOS 768kHz DXD DSD512 USBインタフェースでは再生の前に一旦このPDN信号ライン(RST端子)を “Low” にしてDACをリセットしているのだろう.
Botic 7側では RST 端子を何も操作していないので、DACチップ側は電源投入時の状態のままだ.データシートには “The AK4497 must always be reset upon power-up.” とあるので、Botic 7 側でも何らかの方法で再生前に DACチップのリセットが必要だろう.ピン制御モードだけで使用する場合は、電源投入後のDACチップリセットの方法を検討しておく必要がありそうだ.
音出しテスト中の様子(左側基板: ヒートガン失敗作、右側:半田ごて実装)
今回はピンコントロール(ハードウェア)モードでのテストなので、DACチップの設定を変更可能な項目は非常に限定的だ.デジタル音声信号の入力フォーマットは DIF0, DIF1, DIF2 ピンで設定する事が可能だ.このピンはDACボードの3列並んでいるジャンパーピン端子群に引き出されているので、ジャンパーピンを使用するデータフォーマットに合わせておく必要がある.
今回はI2S信号なので、DF2=”L”, DF1=”H”, DF0=”H” (16/24bit I2S) か DF2=”H”, DF1=”H”, DF0=”H” (32bit I2S) ということになる.デフォルトが 32bit左詰 になっているのでこのピンの設定を行わないと音がでない(滅茶苦茶な音が出る?)ことになる.
ピンコントロールモードでもデジタルフィルタの選択が可能だ.デジタル信号入力フォーマット切り替えと同様にジャンパーピン端子が用意されているのでデジタルフィルターの設定を変更して好みのフィルターを選べば良いだろう.
デジタルフィルターの設定は、 SSLOW, SD, SLOW ピンで行うが、この基板では SSLOW ピンは配線で強制的に “L” に落とされているので、SSLOWピンを自分でコントロールしたければ、ピン端子の “L” 側のパターンをカットしておく必要がある.
残りの、SD, SLOW ピンはフリー(開放)状態と言いたい所だが、このピンはレジスタコントロールモード(ソフトウェア)の I2C制御ピン(SCL,SDA)と兼用のため、I2C側の都合で 回路的に”pull-up” されしまっているので、何もしないと “H” 状態のままだ.”L” に設定するにはジャンパーピンで強制的に “L” 側に設定しなければならない.従って、何も設定していないと SSLOW=”L”, SD=”H”, SLOW=”H” (short-delay / slow roll off) ということのようだ.
写真に写っている3列のピンヘッダは大阪日本橋のシリコンハウス共立電子で購入した.秋葉原では見かけないので大阪に行く機会があったら、入手しておくと良いだろう.確か、3 x 50 pin 仕様の物が売られていた.今回の様な “H”/”L”両仕様のジャンパーピン設定に重宝する.
SSLOWピンは配線で”L” 側に設定されているので、変更するにはパターンカットが必要だ
ハードウェアモードでは予め入力信号フォーマットとデジタルフィルターモードを設定しておく必要がある
肝心の音質については、まだエージングすら済んでいない超適当な雑配線状態なのでハッキリした事は言えないが、最初の音が出てきた時点でクオリティーの高さが感じられる.パーツや回路構成、配線パターンなど吟味して設計すれば、それに答えた素晴らしい音を奏でてくれそうだ.
ESS社の ES9038PRO の音出しが出来るようになったら、両者で比較して我が家のプライマリDACチップを選ぼうと思う.いっそのこと両方搭載してスイッチで簡単に出力を切り替えられるようにしようかな...
DACチップの半田付け作業はこんな感じ
0.5mmピッチの64ピンQFPパッケージの手作業での半田付けは結構大変だ.最初からリフローによる半田付けが前提であればそれ程苦労することはないと思うが、今回のように半田が盛られたパッドだけ用意されている特殊な場合は、実際に作業をやってみないと半田付けの要領が判らないだろう.リフローのような綺麗な仕上がりは望めないが、見た目の醜さを気にしなければ手半田作業でも問題はないだろう.
サーマルパッドの中心より少しずらせてドリルで3〜5mm程度の貫通穴を開ける
裏面側のベタアース部分の穴の周辺のレジストを剥がしておく
この手の作業には実体顕微鏡があると便利(倍率は20倍程度)
位置のずれを確認しながら四隅のピンから半田付けしていく(端子にフラックスをたっぷり塗っておく事が肝心)
裏面側の貫通穴から熱容量の大きな半田ごてを使って半田を流し込む
DACチップの半田付け終了(まだ清掃前の汚い状態)